2012年4月7日土曜日

サロン便り・シリーズ5


「歴史的な円高」。新聞もTVもこぞって「歴史的な」と報じます。戦前はいざ知らず、円高は史上最高値の更新を続けていますので。もう一つの「史上最高」があります。この円高に対し、財務省が史上最大の為替介入を実行しました。
  今回のテーマは、「歴史的な円高」と、政府の「史上最大、巨額の為替介入」です。

実をいえば、ちょうど1年前に、円高、外国為替市場、投機マネーについて『サロン便り』第30号、31号と2回にわたり三部作みたいに詳しくお話ししました。「またか?」とおっしゃる方もあるでしょう。そう思って、私自身、前の2回分を読み直しました。今回は事態が違います。日本国内にとどまらず国際経済の大事態で、今後の国際政治、経済、社会の動向に影響甚大と考え、私の疑問や意見を述べながら問題を掘り下げていきたいと思います。まず、最新の新高値の話から。

さる10月31日の朝6時半過ぎ、テレビのニュースを耳にして急いで起床しました。見聞きしたのが「歴史的な円高」の実相でした。その場で聞くのと、後で活字で知るのとでは衝撃も印象も違います。ここ数ヵ月、1ドル=75〜6円の円高が続いていましたが、この日の早朝、75円32銭の史上最高値をつけ、また円高記録の更新!さっそく財務省が今年3度目の為替介入に乗り出し、一日中、TV各局のニュース、夕刊から翌朝の新聞まで、このトピックスで持ち切りでした。

なぜ円がそんなに買われ、高値が続くのか。いくら欧米の経済が不調、不振だからといって、東日本大震災の惨禍をこうむり、経済復興、民生安定にもたついている日本の円が、最高値を更新するほど買われるとは!この際、掘り下げて考えないと気が済まない。一介の市井人とはいえ、専門家や研究者の談話を参考にするとしても、自分のアタマで、ナゾ解きのつもりで考えてみたい。ご一緒に「歴史的な円高」に迫ってみませんか。


タバコのパイプをきれいにする方法

なぜ「円高」では困るか。巨額の為替介入をしてまで円高に挑むのか。
  私たちは日々、どこででも円を使い円で払い、生活も買い物も円で済ませ、円高になっても不自由は特に感じません。困るのは、円が高くなり、輸出志向の新興諸国メーカーと競争しがたく、商品が売れなくなる輸出業者です。
  1例として、パナソニックのTV事業縮小の記事(10月21日『朝日』朝刊の経済面)を見ていくと…。野田首相はじめ現職大臣や政界の中堅に出身者が多い政経塾の発祥・運営に縁が深い大企業ですから目を引きます。
  テレビの薄型テレビから組み立てまで一貫生産を続け、05年、07年に続き、尼崎市に3工場目として09年に稼働したばかりのテレビ向けプラズマパネル最新鋭工場が、今は生産停止に追い込まれ、テレビ事業を縮小せざるを得ないといわれます。当初の戦略が裏目に出たのは、パネルが韓国や台湾勢の積極的投資で世界的に生産が拡大し、パナソニックが巨額の投資を回収するいとまもなく市場価格が急落したからとのこと。かっては日本のお家芸といわれたテレビ事業も、同社やシャープなど代表企業が、ライバルの躍進と、引き続く円高に苦しい経営を強いられています。
  しかし、待てよ。記事はふれていないが、円高以前の問題があるかもしれない。既存の成果の踏襲、生産計画の読みとか、新興諸国群の過小評価など。大企業経営の成否には、円高だけではない幾つものファクターがあるかも。そんな疑問を感じる記事です。
  もっとも円高こそ問題という事例は多々みかけます。テレビをみていると、大企業よりも中小のメーカーが円高に悩む実情が紹介され、多くの経営者が「もう限界。これ以上の円高には工夫どころか打つ手がない」と語ります。工場の海外移転もアピールされます。


私は何を食べることができます

「想定為替レート」をご存じですか。企業が経営計画や業績見通しをまとめる前提となる為替レートのことです。9月の日銀「短観」(企業短期経済観測調査。4半期ごとに調査し公表)によると、大企業製造業の2011年度の想定レートは1ドル=81円15銭と、過去最高の円高水準でした。実際のレートが想定より円高に振れれば輸出企業を中心に業績の下方修正リスクが高まります。調査内容に「為替感応度」というのもあります。1円の為替変動で年間いくらの利益増減につながるかを調べています。感応度が高い代表的業種には、自動車、電機、精密などあり、例示すれば、トヨタの想定レートは、80ドル/115ユーロ、為替感応度は、ドルの場合340億円/ユーロ60億円、パナソニックは、想定レート同83ドル/110ユーロ。感応度がドルで38億円/ユー ロ17億円。各企業の想定をかなり上回る円高が続いていることが分かります。(10月7日『日経』朝刊「きょうのことば」から。著名8社の数字が載っていますが他は割愛します)

『日経』の10月18日朝刊経済欄「ポジション」には「ドル安より痛いユーロ安」の見出しで、こんな記事が載っています。「米国とは違って、欧州には日本企業の拠点は少なく、海外生産の拡大で、円高の影響を和らげる手が使えないから」。日本総合研究所の試算では、今年度下半期の円相場が1ドル=75円で推移すれば、国内製造業の収益は(なんと!)約300億円のプラスとなる。自動車など加工業種の収益は目減りするが、ドル建てで輸入される原料やエネルギーの調達コストが減るからだ、というのです。輸出企業でも、多様なプラス/マイナスが交錯して業績が調整されるのが分かります。「ユーロ安が痛い」といわれても、財務省の介入対象は円売りドル買いで、ユーロ買いは考慮外でしょうが…。


山の男たちは何を食べましたか?

話のホコ先を変えますが、少々フ(腑)に落ちないというか、日本人には「輸出立国」に思い過ぎがあるのではないか。日本には資源が乏しい;優れた技術があるのだからモノづくりに徹すべき;輸出こそ繁栄の道だ;と。やや単純化した嫌いがありますが果たしてその通りか。
  関連していえば、輸出は外貨稼ぎですが、貿易黒字が幾十年も続き、それが常道と考えて、輸出なくして成長なしと信じ込んでいないか。それには、従来のマスコミの論述や大企業の宣伝が利いているのではないか。
  表立って反論はしませんが、輸出が日本経済の牽引車といわれた時代は確かにありました。けれども、過日公表された直近8月の輸出伸び率は前年比2.8%増、牽引できる数字ではありません。GDP=国内総生産で、輸出の占有率はそもそもそう高くはない。最近は大震災が原因にせよ貿易赤字の月もあり、貿易収支は黒字を続けてはいません。外貨を稼ぐのはいいが、それを国内で活かすには円貨に換えねばなりません。ということは、外貨を稼げば稼ぐほど円買いが必要で、円高は日本経済自体の体質となっています。
  「輸出拠点」という言葉がありますが、今や日本国内に輸出拠点はないという識者が多い時世です。タイ国アユタヤの浸水事件でいみじくも知られたのが、日本の輸出大企業拠点工場の集積でした。キャノンが年末商戦を目指して生産を進めてきた最新鋭の一眼レフ出荷ができなくなり、浸水からの復旧、操業再開のメドさえ立たないとは…。自動車や機械などの各企業が、円高に追い討ちをかけられ困惑しています。


話を史上最大の為替介入に移します。高値更新から一夜明けた11月1日の『朝日』朝刊は1面トップに「最大の介入 10兆円規模」と大見出しをつけました。まさか!と驚いたのは私だけではないでしょう。日経は同日夕刊1面に「7〜8兆円」の見出しと記事。それでもその巨額には驚きです。
  「為替介入」とは、正式には「外国為替平衡操作」と呼ばれます。円売りドル買いの場合は政府短期証券で円資金を調達し、民間金融機関からドルを買い、米国債などで運用します。介入の判断は財務相、実行は日銀。反対に円買いドル売りの場合は、外貨準備を取り崩してドル資金を調達します。今回は巨額の取引を外国為替資金特別会計(外為特会:がいためとっかい)の資金を使って、為替相場の安定という特定の目的のために資金の出し入れをするので、一般会計とは別に取り扱い、経理状況を明確にしています。それにしても、10兆円かそれに近い規模の政府資金の投入です。財政上大丈夫なのか。新聞の解説によれば、外為特会で保有する米国債などの利子から収入があり、詳細は省きますが一般会計への繰入ができるほどで� �私たちが心配することではなさそう。よく活用論が出る政府の「埋蔵金」の代表例です。


むしろ外為介入は、タイミング、金額、公表の仕方がきわめて大事。誤ると効果が薄れます。輸出産業と輸入産業の双方への目配りも必要でしょう。円安誘導の円売りは、「輸出産業への補助金」とも批判されます。今度の介入は、果たして適正だったと言い切れるのでしょうか。さきに記した幾つかの疑問が、アタマをもたげてきます。輸出業界支援とすれば、少々度が過ぎてはいまいか。これほどの巨額を投入するならば、他の用途、方策があるのではないか。
  10月初めに、流通企業の今年度の中間決算が発表され、大震災の影響が見込みより小さく、各紙の「消費の底流、力強い」との見出しが印象的でした。何といってもGDPの主力は内需=国内消費です。コンビニの売り上げが大幅増収、女性や高齢者客が増えたのは、地域の需要、必需品の売り上げが活気づいている表れです。輸出大企業が海外拠点を増強し国内が空洞化すれば、モノづくりも技術も弱体化します。雇用問題も一層深刻化するでしょう。それらを防いで、輸出だけに頼らず、国内需要を刺激して産業活性化を計ることがなぜできないのでしょうか。
  もう一つの重要な数字は? 昨年の世界貿易額は、年間14兆9753億ドルでした。一方、外国為替取引額は1日に4兆ドル!。わずか3〜4日間の為替取引額が、世界の貿易額全体の1年分に相当する! 1年前にも投機マネーの暗躍にふれましたが、円が安全だ、高くなりそうだ、とみれば、円買いに走る。そんな暴挙を許せない。そのためには、国際協調、公正なルールづくりが早急に求められます。
  今回の為替介入のタイミングは、新高値に水を浴びせ、1ドル=79円にまで落としたのですから評価するにやぶさかではないけれど、やがてまた75、6円に戻ってしまわないか。欧米ともに政治・経済混迷の最中で無理は承知でも、日本単独でない、国際的な協調介入ができれば多数国が揃って難事に当たる姿勢が示せたろうに、と悔やまれます。国際的な共同行動は、次のステップとして、投機規制に動く可能性を生み出すではないかと思うからです。


現に、日本の為替介入は今年3度目ですが、初回の3月18日には日米欧7ヵ国(G7)が、日本の呼び掛けで円高を抑えるため協調介入に踏み切ったのでした。前回はユーロ安是正が狙いで、円高を阻止する協調介入は95年8月以来です。なぜ3月に協調介入ができたのか。大震災直後でしたから、日本の企業や機関投資家が、手元資金を増やそうと、海外資産を売って円に交換するという思惑が市場に走って、円が急騰したからでした。日本は約1ヵ月に約7千億円、G7全体でも1兆円規模の投入で成果は上々。外為市場での1日の円とドル取引規模は50兆円程度と見られますので、小さい介入額でも相場を動かし得たことになります。
  外為市場への対応に国際協調がいかに大事かの実例みたいですが、さて、過日の単独介入について、財務相がブ(撫)然として記者会見で述べた表現と内容を思い浮かべながら、取りあえず、10兆円規模の「史上最大の作戦」の成り行きを注視したいと思います。

 (11月14日記。国際サブロー)



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